Basic research基礎研究
免疫チェックポイント阻害薬(Immune Checkpoint Inhibitor:ICI)を用いた全身的ながん免疫療法と、タラポルフィン(レザフィリンⓇ)を用いた光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)によるがん局所療法を組み合わせることで、相乗的な治療効果を期待できます。すでに動物モデルでは、PDTを1か所のがんに行うと、他の場所にあるがんに対するICIの治療効果を増強できることが分かっています(遠達効果といいます)。実際のがん患者さんでは、PDTとICIを併用することで、PDTを行っていない全身の転移巣に対するICIの治療効果も増強されることが期待されます。
放射線療法やPDTに代表されるがんの局所療法が、がんに対する全身性の免疫応答を増強させる事は、以前から知られていました。そのメカニズムとして、局所療法で破壊されたがん細胞からのがん抗原の放出や、免疫活性物質の放出が重要であることが、主に動物モデルの解析によって報告されています。しかし、局所療法の種類による違い、両治療法の最適なタイミング、実際のヒトと動物モデルで起こっている現象の違い、この併用療法が最も効果を発揮できる対象などは明らかになっておらず、解決すべき重要な課題です。
本講座では、動物モデルや臨床試験で得られるヒトのサンプルを用いて、ICIとPDTの併用療法の相乗効果の分子メカニズムを明らかにし、上記のような課題を解決します。そこで得られた知見をもとに、さらなる改良法を開発し、この治療法に適した患者さんを治療開始前に提案することができる診断薬(バイオマーカー)を開発します。
PDTによる局所療法は、抗PD-1抗体による全身性の免疫療法の治療効果を増強させる可能性がある。これにより、PDTを行っていない転移巣への治療効果増強が期待される。図はBioRender.comを用いて作成。
Clinical research臨床研究
ICIに局所治療効果の高いPDTを組み合わることにより遠達効果を誘導し、がん免疫療法の効果が増強するかどうかを、国内6施設にて、医師主導治験を行ってその効果と安全性を検証します。
医師主導治験の名称
切除不能進行再発食道がん及び胃がんに対する免疫チェックポイント阻害剤(ICI)と光線力学的療法(PDT)の併用療法の有効性と安全性を評価する多施設共同第II相医師主導治験(NOBEL-ioPDT試験)
jRCT臨床研究提出・公開システム
https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2051220176